2019.12.11 Wednesday
食養学入門 11 1-9
やはり我々は『A』の考え方を、ついついやってしまうのです。
自分一人で生きていると思ってしまうのです。
長崎県の諫早湾(いさはやわん※)の堰が止められてから、もうずいぶん時が過ぎました。
時の環境庁長官(現在の環境大臣)がやってきてこう言いました。
「ムツゴロウが大切か、人が大切か」と。
ムツゴロウが生息できる環境こそが人が安心して暮らせる環境であることが、この長官には分かっていないのです。
『A』の思想で生きている人なのですね。
ムツゴロウと人の生命を対立させているのです。
病気の方の食養相談の実質は何かと言うと、これにどう気付くかということです。
徹底的に環境に生かされているんだということを、どれだけ真剣に受け止めることができるかということ。
それに気付くということなのです。
『A』の考えでいる間は気が付かない。
それで、私がいつも失敗したなと思うのは、ダーっと話して、この人これで気づいたかなと思っていますと、質問が来るのです。
「よくわかりました。それで、その食事をいつまで続ければいいですか?」と言うのです。
これはまだ『A』の立場にいるのです。
つまり、その食べ物でその人は病気になっているわけで、その病気になった食生活にいつ戻せますか?と聞いているのです。
これは完全に『A』の考え方です。
その考え方が自分を病気にしたとは思っていないのですね。
これでは治りません。
大病している人ほど、これでは治らない。
この辺のことから、カウンセリングは結局技術ではないということです。
ノウハウを教えただけでは、これは治らないということです。
玄米を食べてこういう組み合わせで、こうやってやりなさいと、教えたことでは治らない。
よくなりかけたら以前の食事に戻すからです。
ある食養の大家で有名な方がいて「考えるな!考えるな!」と言っているわけです。
陰陽とかそんなこと考えるからダメなんだというわけです。
実はそれが無理な注文なのです。
考えても考えなくても、この原理が分からない間は何も変わらないわけです。
だからこの原理は勉強していかないと、長期の実行ができないということです。
(つづく)
※諫早湾(いさはやわん)は、有明海の中央部西岸からさらに南西側に入りこんだ湾を指す呼称である。泉水海とも呼ばれる。
遠浅の干潟を利用して、古くより有明海の干拓が行われてきたが、1989年より着工した国営諫早湾干拓事業が、有明海全体を含んだ環境保全上の争点となっている。
※この記事はBL研究所 所長 冨田哲秀著『食養学入門(2004年)』より抜粋しております。
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