食養学入門 11 1-9

 

やはり我々は『A』の考え方を、ついついやってしまうのです。

 

自分一人で生きていると思ってしまうのです。

 

長崎県の諫早湾(いさはやわん※)の堰が止められてから、もうずいぶん時が過ぎました。

 

時の環境庁長官(現在の環境大臣)がやってきてこう言いました。

 

「ムツゴロウが大切か、人が大切か」と。

 

ムツゴロウが生息できる環境こそが人が安心して暮らせる環境であることが、この長官には分かっていないのです。

 

『A』の思想で生きている人なのですね。

 

ムツゴロウと人の生命を対立させているのです。

 

 

病気の方の食養相談の実質は何かと言うと、これにどう気付くかということです。

 

徹底的に環境に生かされているんだということを、どれだけ真剣に受け止めることができるかということ。

 

それに気付くということなのです。

 

『A』の考えでいる間は気が付かない。

 

 

それで、私がいつも失敗したなと思うのは、ダーっと話して、この人これで気づいたかなと思っていますと、質問が来るのです。

 

よくわかりました。それで、その食事をいつまで続ければいいですか?」と言うのです。

 

これはまだ『A』の立場にいるのです。

 

 

つまり、その食べ物でその人は病気になっているわけで、その病気になった食生活にいつ戻せますか?と聞いているのです。

 

これは完全に『A』の考え方です。

 

その考え方が自分を病気にしたとは思っていないのですね。

 

これでは治りません。

 

大病している人ほど、これでは治らない。

 

 

この辺のことから、カウンセリングは結局技術ではないということです。

 

ノウハウを教えただけでは、これは治らないということです。

 

玄米を食べてこういう組み合わせで、こうやってやりなさいと、教えたことでは治らない。

 

よくなりかけたら以前の食事に戻すからです。

 

 

ある食養の大家で有名な方がいて「考えるな!考えるな!」と言っているわけです。

 

陰陽とかそんなこと考えるからダメなんだというわけです。

 

実はそれが無理な注文なのです。

 

考えても考えなくても、この原理が分からない間は何も変わらないわけです。

 

だからこの原理は勉強していかないと、長期の実行ができないということです。

 

(つづく)

 

※諫早湾(いさはやわん)は、有明海の中央部西岸からさらに南西側に入りこんだ湾を指す呼称である。泉水海とも呼ばれる。

遠浅の干潟を利用して、古くより有明海の干拓が行われてきたが、1989年より着工した国営諫早湾干拓事業が、有明海全体を含んだ環境保全上の争点となっている。

 

※この記事はBL研究所 所長 冨田哲秀著『食養学入門(2004年)』より抜粋しております。

 

 

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食養学入門 10 1-8

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4.自然環境と人、東洋哲学の考え方

 

さて、自然環境と人というテーマに移りたいと思います。

 

食養学というのは、環境と人との関係を勉強する学問だからです。

 

食べ物というのは環境ですよね。

 

食べ物という環境と人の関係を見ていこうということです。

 

人だけ見て、その人が住んでいる環境は見ない、それは間違いです。

 

 

今西 錦司(いまにし きんじ)先生(※)の今西生物学というのがありますけれども、非常に東洋的な考え方と似通っているのです。

 

例えば、木がありますよね。

 

今西生物学では、高いところに住んでいる昆虫、中くらいのところに住んでいる昆虫、低いところに住んでいる昆虫という風に考えます。

 

そこの環境下にいる昆虫ということなのです。

 

木の上から1mくらいのところに住んでいる昆虫と、真ん中ぐらいに住んでいる昆虫は違うというわけです。

 

それは環境が違うから、生物種も異なってくる。

 

ここから昆虫を一匹取り出して、顕微鏡で眺めたり、解剖したいりして見るやり方が、現代思想的なやり方。

 

ところが今西生物学というのは、この環境とそこに住んでいる生き物が一体となって、ひとつの生物として見ようということです。

 

これが東洋的な思想なのです。

 

 

 

そういう点で、皆さんに質問しますが、下の図(A:黒塗りの人物 B:白抜きの人物)を見てもらって、どちらがより生命を表しているかと考えていただきたい。

 

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生命というのものをより表現している図は、『A』と『B』を比べたらどちらなんでしょうか。

 

 

先日も薬剤師さんたちに対して、同じ質問をしました。

 

さすがに東洋医学を勉強しているグループで、80%ぐらいが『B』をあげました。

 

でも、それは普通ではないのです。

 

以前、マスコミ関係のところで公園をしたことがありまして、そこに50人くらいおられましたけども、手を挙げてもらったら、『B』だと言ったのは一人だけでした。あとはみんな『A』です。

 

 

『B』は何を表しているのかというと、外側が黒塗りですね。

 

これを環境だと思っていただいたらいいのです。

 

この環境下で縁取られている命ということです。

 

この黒塗りの環境を取り除いてしまうと、どうなるかとよく考えてみればいいのです。

 

黒塗りの部分を一箇所でも消してしまう、例えば、太陽をなくす、空気をなくす、土をなくす、するとどうなりますか?

 

一箇所でもこの黒塗りを消しゴムで消してしまうと、人が消えてなくなってしまうのです。

 

我々の体というのは、徹底的に環境に依存しているのだということです。

 

 

『A』は一人で生きているんだ、環境に関係なく一人で生きているんだという考え方です。

 

環境と切り離しているということです。

 

こちらは、昆虫を一匹だけ取り出して、顕微鏡で眺めている状態。

 

これを命だと思っているのがこちらの考え方。

 

環境も一つの命と考えて、一体となって命を見ようという考え方が『B』です。

 

『A』は西洋的思想、『B』は東洋的思想ということになるわけです。

 

 

(つづく)

 

※今西 錦司(いまにし きんじ、1902年1月6日 - 1992年6月15日)

日本の生態学者、文化人類学者、登山家。京都大学名誉教授、岐阜大学名誉教授。日本の霊長類研究の創始者として知られる。理学博士(京都帝国大学、1939年)。京都府出身。

今西の活動は登山家、探検隊としてのものと、生態学者としてのものがあり、彼の中では両者が不可分に結びついている。探検家としては国内で多くの初登頂をなし、京都大学白頭山遠征隊の隊長などを務めた。生態学者としては初期のものとしては日本アルプスにおける森林帯の垂直分布、渓流の水生昆虫の生態の研究が有名である。後者は住み分け理論の直接の基礎となった。第二次大戦後は、京都大学の理学部と人文科学研究所でニホンザル、チンパンジーなどの研究を進め、日本の霊長類学の礎を築いた。

 

※この記事はBL研究所 所長 冨田哲秀著『食養学入門(2004年)』より抜粋しております。

 

 

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食養学入門 9 1-7

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更に糖尿病の患者が218万人

 

これも実は、国民全員を検査すれば、こんな数じゃないということです。

 

おそらく糖尿病になっている人は、700万人いると言われています。

 

そして、糖尿病であるかどうかを検査する前に、境界型という灰色のゾーンがあるのです。

 

糖尿病とは言えないけれど、それに近いですよという診断になるのですが、その境界型は1200万人いるだろうと言われています。

 

 

私のところで、20代から30代の管理栄養士の人ばかり、31人集めて調査したことがあります。

 

その人たちの血糖値の検査をやったのです。

 

さすがに糖尿病の方はいませんでしたが、31人中17人が境界型でした。

 

半数以上が境界型になっている。

 

管理栄養士で半数以上だったということなのです。

 

ということは、境界型が1200万人いるだろうと言われていますが、おそらくこんな数ではない。

 

もっと多いだろうと思います。

 

1200万人なんていう、糖尿病の大きな背景に、さまざまな慢性疾患が生み出されている土壌があるのですね。

 

要するに日本全体があらゆる患者を作るプールになっているという状態です。

 

 

その結果、自分の健康に不安を持っているかどうか、というアンケートがあります。

 

これは政府が作ったもので、2001年9月のものですから、かなり新しい資料です。

 

この中で、60代以上の人に対するアンケートで、43.6%の人が不安を持っていると答えています。

 

こういう事が、いろんな民間代替医療と言われているようなことに、どんどん感心を向けさせているんだということです。

 

日本はすでに、現代医療に国民が費やしているお金よりも、代替医療に使ったお金の方がオーバーしているのです。

 

特に日本の場合は健康保険制度がどんどん悪くなっていくということですから、受診拒否というより、消極的忌避という人が非常に増えてきているわけです。

 

それでも不安ですから、いろんな代替医療に目が向き始めている。

 

しかし、一番お金がかからない方法は何かということになると、食べ物なのです。

 

どうせ三食食べるなら、自分の健康を増進する食べ物を食べたほうがいいんじゃないか、ということで、テレビを見ましても、食べ物を中心にした健康番組というのは、非常にたくさんの人が見るようになった。

 

そういう点で、非常に食べ物に感心が向きはじめた時代がはじまったということです。

 

(つづく)

 

※この記事はBL研究所 所長 冨田哲秀著『食養学入門(2004年)』より抜粋しております。

 

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