食養学入門 10 1-8

七号食

 

4.自然環境と人、東洋哲学の考え方

 

さて、自然環境と人というテーマに移りたいと思います。

 

食養学というのは、環境と人との関係を勉強する学問だからです。

 

食べ物というのは環境ですよね。

 

食べ物という環境と人の関係を見ていこうということです。

 

人だけ見て、その人が住んでいる環境は見ない、それは間違いです。

 

 

今西 錦司(いまにし きんじ)先生(※)の今西生物学というのがありますけれども、非常に東洋的な考え方と似通っているのです。

 

例えば、木がありますよね。

 

今西生物学では、高いところに住んでいる昆虫、中くらいのところに住んでいる昆虫、低いところに住んでいる昆虫という風に考えます。

 

そこの環境下にいる昆虫ということなのです。

 

木の上から1mくらいのところに住んでいる昆虫と、真ん中ぐらいに住んでいる昆虫は違うというわけです。

 

それは環境が違うから、生物種も異なってくる。

 

ここから昆虫を一匹取り出して、顕微鏡で眺めたり、解剖したいりして見るやり方が、現代思想的なやり方。

 

ところが今西生物学というのは、この環境とそこに住んでいる生き物が一体となって、ひとつの生物として見ようということです。

 

これが東洋的な思想なのです。

 

 

 

そういう点で、皆さんに質問しますが、下の図(A:黒塗りの人物 B:白抜きの人物)を見てもらって、どちらがより生命を表しているかと考えていただきたい。

 

七号食

 

生命というのものをより表現している図は、『A』と『B』を比べたらどちらなんでしょうか。

 

 

先日も薬剤師さんたちに対して、同じ質問をしました。

 

さすがに東洋医学を勉強しているグループで、80%ぐらいが『B』をあげました。

 

でも、それは普通ではないのです。

 

以前、マスコミ関係のところで公園をしたことがありまして、そこに50人くらいおられましたけども、手を挙げてもらったら、『B』だと言ったのは一人だけでした。あとはみんな『A』です。

 

 

『B』は何を表しているのかというと、外側が黒塗りですね。

 

これを環境だと思っていただいたらいいのです。

 

この環境下で縁取られている命ということです。

 

この黒塗りの環境を取り除いてしまうと、どうなるかとよく考えてみればいいのです。

 

黒塗りの部分を一箇所でも消してしまう、例えば、太陽をなくす、空気をなくす、土をなくす、するとどうなりますか?

 

一箇所でもこの黒塗りを消しゴムで消してしまうと、人が消えてなくなってしまうのです。

 

我々の体というのは、徹底的に環境に依存しているのだということです。

 

 

『A』は一人で生きているんだ、環境に関係なく一人で生きているんだという考え方です。

 

環境と切り離しているということです。

 

こちらは、昆虫を一匹だけ取り出して、顕微鏡で眺めている状態。

 

これを命だと思っているのがこちらの考え方。

 

環境も一つの命と考えて、一体となって命を見ようという考え方が『B』です。

 

『A』は西洋的思想、『B』は東洋的思想ということになるわけです。

 

 

(つづく)

 

※今西 錦司(いまにし きんじ、1902年1月6日 - 1992年6月15日)

日本の生態学者、文化人類学者、登山家。京都大学名誉教授、岐阜大学名誉教授。日本の霊長類研究の創始者として知られる。理学博士(京都帝国大学、1939年)。京都府出身。

今西の活動は登山家、探検隊としてのものと、生態学者としてのものがあり、彼の中では両者が不可分に結びついている。探検家としては国内で多くの初登頂をなし、京都大学白頭山遠征隊の隊長などを務めた。生態学者としては初期のものとしては日本アルプスにおける森林帯の垂直分布、渓流の水生昆虫の生態の研究が有名である。後者は住み分け理論の直接の基礎となった。第二次大戦後は、京都大学の理学部と人文科学研究所でニホンザル、チンパンジーなどの研究を進め、日本の霊長類学の礎を築いた。

 

※この記事はBL研究所 所長 冨田哲秀著『食養学入門(2004年)』より抜粋しております。

 

 

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